FM音源の手作り感、デジタルの温かみ
25年前の今日、当時人気絶頂だったTM NETWORKの小室哲哉の初めてのソロアルバム『Digitalian is eating breakfast』が発売された。
このアルバム、私は発売から1年半ぐらい後に、秋葉原のリバティーあたりの中古店で購入し、カセットテープにダビングしては通学の時などに聴いていた。
数ヶ月前、このアルバムをたまたま聴き直した。パソコンにUSB接続した音源ユニットから光出力でデジタルサラウンドヘッドフォンに繋いで聴いていたのだが、一気にアルバムの評価が変わった。
小室哲哉のボーカルは、お世辞にも上手いとはいえない。どちらかと言えば、不快感を伴うような、靴底にガムが着いたまま歩くような、ねちっこさがある。妻に言わせれば、「納豆を壁に投げつけているような声」だそうだ。小室のソロアルバムということで小室の歌声に注目されがちだが、実は、さまざまな音色を駆使した意欲的な作品だった。カセットテープで聴いた時はその音色に気が付かなかったが、限りなくデジタルのままに再生した環境で、音色の豊かさにようやく気が付いたのだ。
このアルバムは、当時の最高峰のFM音源シンセサイザー「シンクラヴィア」を使って作られたという。周波数の変調で多彩な音色を作るFM音源は、シンセサイザーだけでなくパソコンやゲーム機など多くの電子機器で使われていた。だが、80年後半あたりからはPCM音源が安価で高性能になり、これらの機器の音源の主力は、サンプリングによって音の表現にほとんど制約がないPCM音源に取って代わられていった。
そういう意味では、このアルバムの曲は、FM音源で作られた音色の集大成なのかもしれない。タイトルが示すように、限りなくフルデジタルな環境で作られたアルバムだが、そういった時代背景まで考慮すると、このデジタルづくしのアルバムに、FM音源の手作り感、アナログにはない温かみさえ感じてくるから不思議だ。
Filed under 日記 | Comment (0)