ルースからのバトン
薮中三十二元外務事務次官が「オバマ大統領の広島訪問は時期尚早」とジョン・ルース元駐日大使に伝えたことがウィキリークスで暴露されたのは5年前のことだ。この発言は2009年のもの。いま思うに、当時日本国内は政権交代の機運が高まっており、政局が安定していなかった。迎え入れる側の準備ができていなかったのだ。
それでも、駐日大使として初めて広島、長崎、沖縄を訪問したルースのバトンをオバマ大統領に受け渡すことを、日米両国の外交に携わる人たちは諦めていなかった。
駐日大使がルースからケネディに変わっても、バトンはしっかり受け継がれた。そして、ケリー国務長官の広島訪問によっていよいよ“最終ランナー”の登場となった。
さまざまなタイミングが重なった。8年ぶりの国内でのサミットの開催、現職の岸田外務大臣が広島出身であること、北朝鮮の脅威が高まっていることなど。“核軍縮”は日米間だけの問題ではない。両国の世論や世界各国の目も考慮しなければならない。どのような訪問にするのか、両国の政府、外交官の間で入念な話し合いが行われたことだろう。
そして今日、満を持してルース大使のバトンがオバマ大統領に繋がった。
広島平和記念資料館を観たあとに歩く広島平和公園の空気は重い。8月6日真夏の朝にテレビで観る平和記念式典も、爽やかな気持ちにはなれない。だが今日、テレビ越しに観た広島平和公園の空気は澄んでいた。浄化されていた、といってもいいかもしれない。オバマ大統領に話しかける被爆者の坪井直さんのポジティブな表情や、感極まって大統領とハグする森重昭さんのしぐさにもそれは現れていた。
太平洋戦争は米国という勝者と日本という敗者を作り、両国に罪の意識を与えた。だがオバマ大統領の広島訪問は、日米両国の外交の勝利だ。この日を影で作り上げてきた多くの関係者の方々に最大の賞賛を送る。
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