新橋烏森口青春編

6月 20th, 2017

たまに思い出したように読みたくなる小説が、椎名誠の「新橋烏森口青春編」だ。1988年にNHKでドラマ化され、その後、新潮社から文庫本が出てから何度も読み返している。

手元の文庫は幾度かの引っ越しの過程で無くなってしまったが、読みたくなると図書館から借りてくる。新潮社から出ていた文庫は、いつの間にか版元が小学館に移って新装版になっている。

椎名誠がデパートニューズ社(現ストアーズ社)に入社した頃を描いた青春小説で、面白おかしく、どこかペーソスを含んでいる。そこが良い。文章も軽快なので、1時間少々で読み終えることができる。

内容は事実をもとにしたフィクションだ。登場人物もモデルはいるが、実在の人物とは異なる。その中で、鯨やんという人物が出てくる。巨漢で、若手社員たちのリーダー格で、みんなに慕われている。

物語の最終章で、彼は会社をやめ、オートレースの新聞社に転職することになる。クリスマスイブの日、若手社員が集まって彼の壮行会を兼ねた賭けポーカーをするところで物語は終わる。

今までは、主人公であるシーナ(椎名誠本人)の視点で物語を見ていた。だが、今回改めて読んで、この鯨やんが気になった。

この鯨やんにもモデルは存在するのだと思うが、その後続く椎名誠の自伝的作品にはそれらしき人物は出てこない。おそらく、シーナは鯨やんとその後再会することはなかったのだと思う。

鯨やんはシーナよりもひとつかふたつ年が上なので、ちょうど私の父と同じ年齢だろう。その後どういう人生を歩んだのだろう。オートレースの記者としてレース場に通い、オートの歴史をつぶさに見てきたのだろうか。川口でこの鯨やんのモデルと知らない間にすれ違っていたかもしれない。そんな想像をしながら読み返した。

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