固有名詞

5月 23rd, 2014

固有名詞に無頓着な人というのは、案外少なくない。例えば、かなりの鉄道マニアでも「青春18きっぷ」を“青春18切符”と漢字で書いてしまう人がいる。鉄道の車両形式の違いはしっかり区別するのに、自分たちが使う商品の正式名称はあやふやだったりするのだ。

ドラえもんやちびまる子ちゃんを、「ドラエモン」だの「ちびまるこチャン」などと書いたら、途端にライセンスの使用許諾を得ていない偽物のような印象を受ける。

きゃりーぱみゅぱみゅも、平仮名で表記しているのは、彼女の「カワイイ」というコンセプトを表現するためではないだろうか。だから「キャリーパミュパミュ」と表記すると、コンセプト自体が失われてしまう。

イチローは、今やメジャーリーグの“Ichiro”だが、日本では「イチロー」の表記で統一される。逆輸入的にアルファベット表記を日本語にするだけなら、本名の「一朗」や「いちろう」でも構わないと思うが、やはり「イチロー」と片仮名で表記するのは、「イチロー」という固有名詞がある種ブランディングされたアイコンだからだ。

かつて、よど号ハイジャック事件の犯人グループは、致命的なミスを犯した。声明文の最後をこう結んだのだ。

「最後に確認しよう。われわれは明日のジョーである」。

言うまでもなく“明日のジョー”とはボクシング漫画の名作「あしたのジョー」だが、作品タイトルを正しく表記しなかったせいか、声明文が何とも締まらない、微妙な空気を醸し出している。それだけ固有名詞を正しく表記することは大切なのだ。

固有名詞は、意識していたとしても、変換間違いやタイプミスで正しく書けない場合が多い。だが、可能な限り意識しなければならない。

今日、ここまで固有名詞にこだわる話になったのは、昨日、第一生命保険が発表した「第27回サラリーマン川柳コンクール」の第1位が微妙だったためだ。

「うちの嫁 後ろ姿は フナッシー」

“フナッシー”は、千葉県船橋市の非公認キャラクター「ふなっしー」のことだが、正しく書けてないのだ。にもかかわらず、この作品が第1位となった。そこに、画竜点睛を欠いたような、何とも言えぬ“惜しい”感じがある。

「うちの嫁 後ろ姿は ふなっしー」

と正しく書けてたら、間違いなく腑に落ちる作品だったのに。

でも、“フナッシー”と微妙な間違いをしているところが、かえってサラリーマンの哀愁というか、情けなさを出していると思えば、案外優れた作品なのかもしれない。

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